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 息が上がる。車が雪道につけた幅三十センチ程の轍をつんのめりながら、必死に走る。降りしきる雪が頬に当たって冷たい。 もお。雪。雪。雪。こんなの、歩いてるのと変わらん速度や。  時折、雪に足をとられる。思ってもみないところで横滑りすると、ぶわっと汗をかく。寒いどころか、だんだん暑くなってくる。傘は閉じてしまいたいところだけど、頭から雪まみれになって風邪を引くのがオチだ。  まっ白な平原になった田んぼの向こうから甲高い警笛が聞こえて、かすかに電車が見えた。  うわあ。まだ()んといて! 「喜々(きき)! 早く! 乗り遅れるよ!」  真緒ちゃんが、向こうのホームから叫んでいる。  そんなの、私が一番わかっている。  電車、止めといてえ!  木造の駅舎の引き戸をガタっと開けて、無人の改札を抜ける。白いカーテンのような雪闇の中から、電車が姿を現した。でもまだ間に合うはず。真緒ちゃんがいるホームに駆け上がると、遮断機のバーが私の背中越しに下りた。セーフ。でも一瞬でも遅れていたらホームに上がれなかったと思うと、ぞわっとして汗も引いた。そこに電車が滑り込んできた。圧雪されてギュギュッときしむ音がする。私は乗客の列の一番最後につく。  
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