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 その朝は寒くて、細かい雪が降っていた。駅に着いて傘をすぼめると、サラサラと雪が落ちた。 「おはよ。喜々、早いやん」  真緒ちゃんの息が白い。 「うん、目覚まし時計二つ」  Vサインを出して笑う。この前みたいに乗り遅れるかもしれない恐怖と戦って、雪道を走るのはもうこりごりだ。  あの途中の駅に電車が近付くと、寒そうに背中を丸めた葛西くんが見えた。コートのフードを脱いでいる。小さな駅舎に居る彼は、まるでお話の中のガリバーみたいだ。 「お……おはよ」  乗り込んできたので思い切って挨拶した。 「あ、ああ、おはよ」  葛西くんも返してくれた。それだけで心が浮き立った。  電車には終点まで乗っていく。駅から高校までは直行バスが出ている。駅に近付くと、真緒ちゃんが小銭入れを取り出した。 「私、今日は当番やから、バスに乗っていくけど、喜々はどうする?」  その時、向こうに居る葛西くんが目に入った。とっさにひらめく。 「あー、パン屋さんに寄るし、歩いていく」 「そっか。うん、わかった」
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