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ーーあれれ? 何だか身体がふわふわする。
意識が覚醒する狭間で恋が感じたのは、雲の上にでも浮かんでいるような、そんな感覚だった。
けれども不快感は全くない。
その代わりに、いつまでもいつまでもこうしてふわふわと漂っていたい。何てことを案外真剣に願ってしまうほどに、途轍もなく居心地がよかった。
それだけ酔っていたということだろう。
いや、現在進行形でかなり酔っている。
でなければーー。
「……ん……恋ちゃん」
覚束ない意識のその先で、優しく耳に心地いい声音で名前を呼ばれて、重たい瞼を何とか押し上げた。そこに、心配そうに顔を覗き込んで様子を窺ってくれているカレンの顔を捉えた瞬間。ドキンッと盛大に胸をときめかせてしまったことに対しての、説明がつかない。
これまで、そんじょそこらの女性よりも女性らしく、綺麗な見かけのカレンを男として意識などしたことなんて、一度もなかった。
酔っているからとしか思えない。
しかもカレンは、以前どうして女装しているのかと訊ねた際に、こう答えたのだ。
『あたし、女に生まれたかったの。でも両親が厳しくて、そんなこといったら勘当されるわ。だから夜だけこっそり女装してるの。それに男にしか興味が持てないの。だから安心してちょうだい』
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