親友は女装男子!?

13/15
前へ
/124ページ
次へ
 突然のカレンの豹変ぶりに、酔っている恋の頭が追いつかない。ただただ目の前のカレンの変わりように目を瞠るばかりだ。カレンに何を言われたかも理解が追いつかないでいた。  瞬間、これまで保たれていた均衡が木っ端微塵に砕け散る。  といっても実際にそのような音がした訳ではない。あくまでも恋がそう感じただけだ。  酔っていながらも本能的に身の危険を感じ取った恋は、僅かに怯んだ。  目一杯広げた腕を引っ込めようとした刹那、カレンによって、華奢な見かけとは違ったやけに逞しい腕により強い力でぎゅうぎゅうに抱き込まれてしまっていた。  つい先程、「怖い」と感じたはずなのに、カレンの抱擁も微かに香る爽やかなシトラス系の香りも何もかもが、どこか懐かしく、愛おしいとさえ思えてくるのはなぜだろう。  カレンによってぎゅうぎゅうに包み込まれて苦しいはずなのに、ちっとも苦しくない。  その重さも強さまでもが愛おしい。  どういう訳だか、離れたくない。ずっとずっとくっついていたい。そんなふうに思ってしまっている。  恋は酔っていながらも、己の心情に盛大に戸惑ってしまっていた。  もちろん、そんなふうに感じてしまう自分にもだが、豹変したカレンに対してもだ。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2790人が本棚に入れています
本棚に追加