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しばらくカレンにされるがままで動けずにいた。
どれくらいそうしていただろうか。おそらく数十秒ほどだと思う。
「抵抗しないってことは、俺を受け入れたって捉えていいんだよな。そうだよな」
カレンの思いの外逞しい腕に包まれている恋の耳元に、あたかも自分自身に言い聞かせているかのような、カレンの低い声音が届いた。
どうやら恋の示した反応は、了承してもらえた、と捉えられてしまったようだ。
確かに、カレンに触れられて気持ち悪いだとか怖いといった負の感情は一切感じなかった。
それどころか、もっともっと触れてほしい。そんなはしたない感情を抱いてしまっているくらいだ。
ーーう、嘘! こんなのあり得ない!
恋にとって、驚きでしかなかった。
なぜなら、恋が男性に対してこんな感情を抱くだなんて、本来ならあり得ないからだ。
そういう意味でも、カレンは恋にとって、稀有で特別な存在であるらしい。
ーーそ、そういえば、カレンと初めて会ったときもそうだ。
あのときは、怖かったし、混乱していたのもあって、深くは考えなかった。
ーーううん、違う。
ショックも大きかったし、怖くてどうしようもなくて、考えることを放棄したのだ。
ーーそのせいだって思ってたけど、そうじゃなかったのかな?
だとしたら、あのとき、他の誰でもないカレンが傍にいてくれたおかげだった、ということなのだろう。
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