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あることがきっかけで、あたかも女として生きることを放棄したかのような、毛ほどの色気もない、いつもお決まりのパンツスタイルのラフな格好をしている恋とは大違いである。
隣の彼にチラッと視線を向けてみる。
透け感のあるフェミニンなシフォン素材の、淡いスモーキーピンクのロング丈ワンピに、長身を考慮しているらしく、低めだが上品なベージュのコーンヒールのパンプス。
耳元には、なんでも男心を擽る効果があるのだという、シルバーチェーンに小さなクリスタルを連ねた華奢なピアスがゆらゆらと魅惑的に揺らめいている。
見るからに、蠱惑的ーーという言葉がしっくりとくる愛らしい女性だ。
女性らしい見かけからしても、落ち着いた所作からしても、この女子力満載な彼が男子だとは誰も思うまい。
初めて会った際、恋でさえもまさか男だとは思いもしなかったのだから、当然だ。
そう、彼は、近頃巷で増殖の一途を辿っているという、女装男子だった。
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