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翌日の月曜日。
仮住まいのホテルから秀と一緒に、送迎に来てくれた、青山の運転する黒塗りの高級セダンにより、数日前までの職場であった、藤花総合病院へと出勤した恋の胸は、少しの期待感と高揚感、じわじわとせり上がってくる不安感とでいっぱいだった。
期待感と高揚感には、また仕事ができる、という嬉しさと、医師である秀の仕事ぶりを見ることができる、というわくわくした気持ちが。
不安感には、医療事務と秘書士の資格はあれど、秘書の経験は皆無だったため、秀の足を引っ張ることになるのではないかという想いが大半を占めている。
というのも、ここ藤花総合病院は平成の頃より、急性期脳卒中を集学的に迅速に、診断と治療を行う脳卒中ケアユニットーーSCU(StokeCareUnit)を開設して以来、最新の高度医療を受けようと全国から大勢の患者が集ってくるほどの有名な病院だった。
つまりは超エリートの医師たちが超がつくほど多忙を極めている戦場のような職場であると言うことだ。
受付業務を担っていたと言っても、派遣だった恋に、そんな戦場で医師業を熟しているのであろう秀の医療秘書が務まるなんて思えないでいた。
ーー不安になるのは当然だと思うんですけど。この人たちは一体全体何を考えているんだろうか……。
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