君は魔女?4

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君は魔女?4

今現在、この世での妹は面白そうに話す。 信じてくれなくてもいい、信じてもいい、嘘だと思ったっていいし、すぐに忘れてしまったってちっとも構わない。 でもね、うたちゃん、私のこの記憶は物心ついた頃からずっとずっと消えないの。 昔から私の中に宿っていたから、うたちゃんが今まで幾つも作り出して来た作品や文章の中で、きっと一番最初に作ったものだと思うの。 生まれる前の母の腹の中では共有していた、いつかの、どこかの、私たち二人の物語。 「それって、作ったのは神様的な人なんじゃないの」 「神様なんているわけないじゃん」 「やおよろずの神と、付喪神なんかは、私は信じてるんだけど」 「日本人だしね。いいんじゃないかな。ねえ、覚えてる?」 小さな頃に、姉妹喧嘩になると、口が達者だったうたちゃんが、必ず私の心を鋭く残酷に刺すとわかっている言葉でもって攻撃をしたよね。 そうすると、あんまりたくさんの言葉を知らない、泣き虫で弱虫で、それでも負けん気だけは強かった私は我慢なんか出来るわけがなくって。 うたちゃんの腕や脚を爪で酷く引っ掻いて、血が出るまで引っ掻いて、結局喧嘩の原因は有耶無耶にされちゃうの。 父も母も、理由は何にせよ、先に手を出した方が悪い、と言う躾けの仕方だった。 「そうそう、覚えてる。私は、わざとアンタが私を攻撃して来るように、強烈なセリフを選んで口にしてたんだから」 「だと思ってた。でもさ、そのあとのことは?いいよ、私は怒ったりしないから。気づくって」 「そう。傷を自分の爪でもっと抉ってから、親に見せるようにしてたね。気づかれてるのも、私は知ってたけど。アンタは言わないってのも、わかってた」 「ふふふ。でしょう。そう言うとこ、なんかすっごく、前世のうたちゃんと同じ」 火あぶりにされたのは、私ではなくて、姉の方だった。 そう、つまりは、今現在の世での妹が持っているらしい前世とやらの。 その、記憶の中ってやつでは。 姉であった妹が、私のかわりに火あぶりにされたのだ。
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