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久喜はいい男でかなりモテる。
「男相手にこんな事をしなくてもいいだろう」
ヌかれた後、ドキドキが止まらない胸の内を隠して少し僻み気味に言ったが、片付けや身支度をしているのが、行為が終わった後の様で妙な、気恥ずかしい感覚がして戸惑った。
「こんな気持ちいいコト止められない」
と久喜が笑う。
女とデートして飯奢って、ホテル代出して、なんて馬鹿らしくてやってられない、と久喜は笑う。いや、皆それがしたくても出来ない男がわんさかいるのを、久喜には分からないようだ。
声を掛ければ、女は誰でも喜んで久喜に付いて行く。
「ケチなのか?」
食事代やホテル代が惜しいのかと思った。
「ケチじゃねぇーよ!!」
久喜が激しく否定した。
どうやらケチとは思われたくない様だ。
「久喜とデート出来るなら、女の方が金を出してくれるんじゃないのか?」
「それはカッコ悪いだろ」
言っている事がよく分からなかった。
食事代やホテル代を出してまで、と思うのに出さないのはカッコ悪い。
どうしたいのかが分からない。
「俺、性的に満足できれば男でも女でも、どっちでもいいんだよ」
はっは、と久喜は笑った。
サカリのついた猿だな、冷ややかな視線を送った。
そんな事を聞きつけたら、どっと人が押し寄せて、君にセックスアピールをし始めるぞと思う。
久喜と飲んだ男が受ける洗礼を、俺も受けただけだ、気に留めるなと、俺は自分に言い聞かせた。
なのに…
久喜ばかりを目で追ってしまう。
同じ学部で同じ学科、授業も一緒の時が多い。俺が先に講義室にいると隣りに座ってくる久喜で、先に久喜が講義室にいるときは、敢えて離れたかなりの後方に座ったが、必ず俺を見つけて隣りに来るので、ドキドキしてしまって困った。
誰でもいいと言っていただろう、俺じゃ無くても良かったんだぞ、大いびきを掻いて寝ていた小島が久喜の隣りで寝ていたら、小島と…
どうして胸が痛むのか分からない。
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