時の欠片

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時の欠片

私は高齢で認知症だ。 さっきやろうとした事を忘れ、親類、友達、夫の名前、顔さえ、忘れた。 買い物さえままならない、人間だ。 足腰も弱く、車椅子で、今の生活は約80%がヘルパーさんに頼っている。 最悪だ。 どんどん忘れていってしまう。 私が何度も同じ事を聞くと周りの人達は邪険な顔をして、言う。 「さっき教えたばかりじゃないですか!!」 違います。 違うんです。 「覚えていたいから、何回も聞くだけなんです。」 お願いだから、そんな顔、しないで。 そんなある日、私はヘルパーさんが持ってきてくれた新聞の広告に目が止まった。 『あなたの記憶の欠片、預かっています。記憶の店、プロセチカ。』 え? 『記憶の欠片』? 。 もしかしたら、私の『記憶の欠片』もあるかもしれない。 記憶の店に行ってみたい。 そう、思った。
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