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カラカラとどこかの窓の開く音がした。オイラはばっちゃんが帰ってきたんだと思って、でも、玄関から入ってこないなんて少しおかしいなって思いながら音のしたほうに向かった。だけど、そこにはばっちゃんはいなかった。それどころか誰もいなかった。がっかりしたらそこで力が入らなくなった。たぶんお腹が空きすぎたんだろう。
「おい。そこのちび。おまえはここの飼い猫か」
声のしたほうに目を向けると、そこには大きな猫がいた。オイラとは違うマダラ模様で、頬に大きな傷跡がある。
「ちびじゃない。みいこだ。ここはばっちゃんとオイラの家だ。ばっちゃんとオイラは家族なんだ」
「そうか。ではそのばっちゃんはどうした」
「わからない。ばっちゃんが帰ってこなくなって、ちょうど三回目に日が暮れたところだ」
大きな猫は舌打ちをした。オイラは怖くなって後じさりした。
「ばっちゃんはきっと、もう帰ってこないぞ」
「そんなはずはない。ずっと一緒だと約束した」
「でもおまえはもう三日もここで待っているだろう。それが何よりの証拠だ。ここで飢え死にしたくなけりゃオレについてこい。メシを食わせてやる」
オイラはついていくか悩んだ。本当はもうばっちゃんが帰ってこないんじゃないかって心のどこかで思っていたから。悩んで悩んで、だけどもう何も考えられないくらいお腹が空いていたからこの大きな猫について行くことに決めた。
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