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「おい、おまえら何をやっている」
立ちふさがるように現れたのは真っ白な猫だった。サファイアブルーの瞳が冷たくオイラたちをにらみつける。
「見てわかるだろう。おれたちは泥棒さ」
「そ、そうだ。どろぼうだ」
堂々と答える師匠の背中に身を隠しつつ、オイラも返事をした。どろぼうっていうのが何かはよくわかっていないが。
「おい、トラ。おれが引き付けておくからその隙に逃げろ。絶対に捕まるなよ」
「え、師匠は?」
「大丈夫。あとから行くからすぐ近くの公園で待ってろ」
師匠は白猫に飛びかかる。白猫はぎゃっと声を出したが応戦している。オイラは少し遠回りをして窓にたどり着き、そっとその家を後にした。そして、師匠に言われたとおり、近くの公園の茂みに身を隠した。ふうと息をつくと、どっと疲れが出てきた。もらってきたごはんを食べて待っていようと思ったけれど、袋をかみ切ることができなくて、くわえたまま眠りについた。
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