秋、金木犀が香る日。

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思い出の宝箱みたいな人だった。この人を見ると、いつも懐かしさが湧いてくる。 最近髪色を変えたから、今日は、当時好きだった暗めの茶色より明るい茶色のマスカラを塗っている。 アクセサリーは社会人にふさわしく少しだけ値の張るものになり、イヤリングはピアスになった。 時計は電池を交換してずっと使っているから変わらない。 好きだったハイヒールの靴は、ローヒールのパンプスに。歯ブラシは電動歯ブラシに。 シャンプーは好きなものが廃盤になって、蜂蜜のなんとかっていうシリーズに。 大好きだったスコーンは時間がなくて焼かなくなり、代わりにお高い果物を買えるようになった。 赤みの強かったティントリップは、ピンクベージュのマットリップに。 これまた赤かったマニキュアは、若干の色味の違いがあるものの、通年通してピンク系のジェルネイルになった。 目の前の人は、いつも懐かしさを連れてくる。 大学時代の思い出と、懐かしい好きなものと、重ねた年月を思い出させる。 私たちは大人になった。 出会ったときからお酒は飲める年齢だったけど、そういうことではなくて、生活が変わった。 後輩ができて、自分はどう見えるんだろうって気にするようになった。 謝るのが上手くなった。 ごまかすのが上手くなった。 そうして、あなたは結婚する。
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