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高級車の迫力に、近づくことを少し躊躇ったが拾ったものを渡すだけだと、私は車の方へ歩いていった。
「あの……」
停まっている車の運転席の窓から恐る恐る話しかけると、一重瞼の目が私に気づいた。
握っていた和紙の包みを差し出そうと思ったときだった。
「誰?」
横から聞こえてきた声に、目を向けた。
後部座席の窓をあけて、顔を出したのは制服をきた男の子だった。
思わず目を奪われたのは、とてもきれいな顔立ちをしていたからだ。
年が近そうだが、男の子の着ているチャコールグレーの学ランはこの辺りでは見かけない制服だった。
男の子は私を上から下までさっと視線を動かしてみると、めんどくさそうに言った。
「なんだ、また金目当てか……」
一瞬、何を言われたかわからなかった。
かねめあて?
金目当てって言った?
「は?」
何、こいつ。
唖然とする私をよそに男の子は、窓を閉めながら「宮崎、早く出せよ」と運転席の男の人に偉そうに指示した。
運転席の男の人は、私に視線を向け、少し迷う素振りをしたがエンジンをかけ、車を発進させた。
小雨が降り注ぐ道路で、私は呆然とその場に立ち尽くした。
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