25人が本棚に入れています
本棚に追加
「店を閉める?」
「うん、経営が苦しかったらしくて。次のバイトがすぐ決まるかわからないし」
そう口にしたとき、母は目を大きく見開いた。
「金がないって何よそれっ」
凄い剣幕だった。
母の反応に戸惑うとともに、悲しみが身体の奥で滲んでいく。
どうして、私が責められないといけないのだろう。
「どういうことよ?!」
詰め寄ってきた母に、さらに感情がえぐられる。
どういうこと……どういうことって――――
「……人のせいにしないでよ」
喉から発した声は、か細かった。
苛立ちを隠しもせず「は?」と聞き返した母に、私は怒鳴った。
「あんたのせいでしょ! あんたが親じゃなかったら、家族じゃなかったら私だって!」
声を張り上げた途端、ボロボロと堰を切ったように涙がこぼれた。
この人の前で、泣きたくない。
私は逃げ込むように部屋に駆け込んだ。
暗い部屋の中、奈智が寝ているのか起きているのかわからない。
込み上げてくる涙を拭いながら、椅子に座ると顔を隠すように机に突っ伏した。
必死で節約して、働いて、家事して、友だちと遊んだり、誰かを好きになったり、勉強する時間も、着飾る余裕も何もない。頼れる人もどこにもいない。
「……もういやだ」
最初のコメントを投稿しよう!