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 SNSに同級生があげた写真で食べているイチゴパフェの値段は、我が家の一日分の食費だ。 「まほろちゃん、待って待って」  急いで店から出ようとしていたとき、名前を呼ばれ、足を止めた。  振り返ると、店長が私に袋を差し出した。  学校が休みの日にアルバイトで働いている商店街のパン屋・ベーカリー三日月の店長は、四十代半ばらしいが髪が薄く少し老けてみえる。 「これ、試作品のパン。良かったら持って帰って」 「えっ、いいんですか?!」  袋の中を覗くと熊か猫か判別できないパンがたくさん詰め込まれていた。   最近、店長が取り組んでいた子供向けのパンの試作品だ。 「ありがとうございます。弟も喜びます」  パンの袋から視線を戻すと、店長は何か言いづらそうな顔をしてぽりぽりと頬をかいた。 「うん、まあ、それでね……」  いつも下がっている店長の眉が、さらに困ったように下がっていて、ピンときた。 「あ、シフトですか?」  店長が何かくれてごにょごにょ話しづらそうにするときは、大抵平日のパートさんの代わりに出れないか、という相談だ。 「それなら出れる日だったら出たいので、よければ日にちをメールして貰えますか? 今日はちょっと急いでいて」 「あっごめんごめん、引き止めちゃって。まだ先だし、話はまた今度でいいから。弟くんと、頼子さんに宜しくね」  店長がハハハと苦笑いしたとき、お店にお客さんがきたので、私は会釈すると、急いで店を出た。  早く行かないといいものが、無くなってしまう。
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