20/20
前へ
/453ページ
次へ
 中には三枚の五センチ程の木でできた薄い板が入っていた。  二枚の板は何の模様もなく、一枚目の板にだけ蓮のような花の絵が掘るように刻まれている。  特にひび割れた様子もない。  和紙の包みの裏にはよくみると小さく文字が書かれていて、開いた内側にも、五行ほど中国語のような小さな文字で何か書かれているが、全く内容がわからない。  何の音だったのだろう。  私は板を再び和紙で包み、学校の鞄に入れた。  持ちかえってしまったけど、人の物を持っているのは気が引ける。  壊したら嫌だし、返さなきゃ。  学校の後、洋食屋へ行く前に、アーケード商店街に行ってみよう。  落とした人にまた会える可能性は低そうだけど、いなければ交番に届ければいい。  机のライトを消して、ベッドにもぐり込んだ。  部屋の向こうから、もう母の声は聞こえない。  だいぶ酔っていたけど、そのまま寝ていないだろうか。  母の様子が気になったけれど、今日はもう顔を合わせる気にはなれなかった。  明日、母はどんな顔をしているだろう。  奈智の誕生日に喧嘩なんかしたくない。
/453ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加