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「じゃあ、18時に洋食屋ね」 「うん」  学校へ向かう通学路、分かれ道で私は奈智に今日の待ち合わせ時間の確認をした。 「寒いから奈智の方が早くついたら、先にお店に入っててね。お店の人には……」 「高戸で予約してますって言うんでしょ。大丈夫だよ」  私の言おうとしたことを先に口にすると、奈智はランドセルのベルトを両手で握った。 「……お母さん、来るかな」  奈智の言葉に、私は返答を躊躇した。  朝、私たちが目を覚ますと、夜に酔っ払って家に帰って来ていたはずの母の姿は家になかった。  私と言い合った後、男のところに行ったのかもしれない。 「来ないかも……」  私の言葉に肩を落とした奈智の頭をくしゃっと撫でた。
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