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 私は目を見開いた。  瀬戸くんの手にあったのは、あの和紙の包みだったからだ。  スマートフォンを取り出したときに、落としたしまったのかもしれない。 「ごめんっ。ありがと」  人の落とし物をさらに落とすなんて。 「何、大切なもの?」  焦った私をみて、瀬戸くんはそう訊きながら隣の席の椅子に座った。 「お守り?」 「え?」 「『愿望成真』ってたしか『願いが叶う』って意味じゃなかったっけ?」  瀬戸くんは、和紙の包みの裏に書かれた小さな文字を指さした。 「えっ、瀬戸くん。この文字が読めるの?」 「いや、全然。母さんが華流ドラマ好きでさ。『愿望成真』ってタイトルのドラマみてたから」  そうなんだ、と感心していると「てか、高戸のだろ?」と瀬戸くんは尋ねた。 「ううん、落とし物なんだよね。昨日、帰りにぶつかりそうになった人が落としていって。帰りに届けようと思って持ってきたんだ」  瀬戸くんは不思議そうな顔をした。 「それって知らない人ってことだよね? 届けられるの?」
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