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 奈智は携帯を持っておらず連絡の取りようがない。  待ち合わせの時間までまだだいぶある。  まだ洋食屋にいないはずだ。  きっと大丈夫。  そう考えたが、胸騒ぎを覚えた。  私は踵を返し、交番ではなく三日月商店街へ駆け出した。  三日月商店街へ近づくと、人だかりが出来ており、目の前の光景に息を飲んだ。  空に黒煙が立ち上ぼり、見慣れた商店街の何軒ものお店が、赤い炎に包まれている。  消防車や救急車のサイレンが遠くから聞こえてくる。  まるで夢を見ているようだった。  待ち合わせた洋食屋へ向かうと、いつも目にしていた洋食屋の看板は傾き、燃えている。  奈智も人波の中、近くでこの光景をみているのではないか。  まだお店には入っておらず、私を探しているのではないか。  そう思い、人波を掻き分けて辺りを必死で探したけれど奈智は見つからず、時間ばかりが過ぎていき、奈智の行方を知ったのは、私の電話にかかってきた病院からの連絡だった。
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