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奈智は、いつか言っていた。
大人になった自分の姿を夢でみたのだと。
それを聞いて、私も奈智が大きくなった姿を早くみたいなと楽しみに思ったんだ。
すがるような気持ちで瀬戸くんが『お守り』と呼んだ和紙の包み強く握り、ぎゅっと目を閉じた。
お願いです。
奈智の見た夢を現実にしてください。
どうか奈智を――――
「奈智を助けて」
絞り出すような微かな声で呟いたとき、「お嬢ちゃん、着いたよ」と声をかけられ、はっと目を開けた。
気づくとタクシーは病院の駐車場で停まっていた。
「大丈夫かい? 顔が真っ青だけど」
私は頷くと、手にしていた和紙の包みを鞄に入れ、代わりに財布を取り出して運転手に代金を渡すと、病院へ駆け込んだ。
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