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「うーん、なんかね。夢の中で僕、すごく背が伸びて、急に大人になってた」
「大人に?」
想像して思わず、ふふっと笑った。
「もうすぐ誕生日だからじゃない?」
「あ~、そうかも」
来週は奈智の十一歳の誕生日だ。
私は椅子から立ち上がると、ベッドの前まで歩いていき、顔を出している奈智を見上げた。
「ねえ、今度の誕生日は美味しいものでも食べにいこうか」
奈智は目を丸くした。
「……いいの!? 大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。商店街の洋食屋さんに行かない? 小さい頃、私も誕生日に連れていって貰ったんだ」
まだ、父がいて奈智のいなかった頃だ。
「やったぁ!」
奈智は大きく両手を上げると、何か思い出すような顔をして私に尋ねた。
「お母さんは、くる?」
「声かけるよ」
「うん……」
喜ぶかと思ったのに、奈智は浮かない顔をした。
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