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「……呼びたくないの?」 「ううん」  首を振った奈智は不安そうな目をしている。 「お姉ちゃん……彼氏つくるの?」  脈絡のない言葉に、私は一瞬固まった。 「か、彼氏?」 「だって、お母さんが言ってたから」  家を出る前に母が言っていたことを思い出したのかと、理解して苦笑した。 「できないよ。モテないし、そんな余裕もないし」 「えっ、お姉ちゃん、モテないんだ!」  声を弾ませた奈智がちょっと癪にさわり、手を伸ばしてそのほっぺを軽くひっぱる。 「何、お姉ちゃんがモテないのが嬉しいのかぁ~?」 「ひゃって、お姉ちゃんも家に帰ってこなくなったらひゃだし」  喋りづらそうにそう述べた無抵抗な頬っぺたから手を離す。 「帰ってくるよ。奈智が一番大事だもん」  私は母とは違う。  私の言葉を聞いて、奈智はちょっと照れたように微笑んだ。 「変な心配してないで、もう寝よう。明日は学校だし」  奈智は「うん」と返事をすると、布団に潜った。  机のライトを消して、私もベッドに横になった。 「……お姉ちゃん」  真っ暗になった部屋の二段ベッドの上から再び奈智が私を呼ぶ。
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