オレは不幸だ

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「後ほど大学病院に検査の予約をしますけど、PET検査の機械は台数が限られているので、来週に空いている時間があったら確保してしまいましょう。予約が取れた時点で日時をご連絡します。いいですね」 「いや~ぁ、来週は大きなプロジェクトのプレゼンがあって、週の後半は局長会議も入ってるし、ちょっとスケジュールを調整したいんですけどねぇ~」 「佐藤さん、そんなにのんびりしている場合じゃないんですよ。できるだけ早く精密検査をして、対応策を決めないと…」 オレの…肺が…そんな緊急事態? 痛みがあるわけでもないし、何か違和感があるってわけでもない。まったく実感も湧いてこなければ危機感もないから、地球の裏側のニュースを聞かされているようなものだ。テレビドラマならショックで蒼白になった顔がアップになって、衝撃音が響く所なのだろうが、現実だとこんなものなのかもしれない。 「PETで検査した結果次第ですが、もしガンが他の器官や臓器に転移していなくて、手術や放射線治療ができるようなら、まだ治る見込みはあります。希望を持ちましょう」 若い医師はそう診断結果をくくって、告知を終えた。
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