オレは不幸だ

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正直、何も食べる気が起きないのだが、今夜はガンの話はしない…と決めたのに、食欲の事で心配させても意味がない。まあ、漬物でもつまんで、そのうち寝てしまえば気にもしないだろう…。 しばらく妻とテレビを見ながらビールを一本空けたところで、自分の部屋に行くタイミングを覗う。 「そろそろ寝るよ」 「あらヤダ、本当に具合が悪いの? 大丈夫?」 鋭い…。長年連れ添った夫婦の勘ってヤツなんだろうか。それともオレがよほど普段と違っていて、怪しいのだろうか…。 「…ウン、ウン…」 いつものようにちょっと間を空けて、曖昧に答えておく。こんな適当に誤魔化しておきたい状況の時は、長い会話が成立しない夫婦でよかったと思う。 とりあえず、うっかりボロを出してしまう前に、自分の部屋に引き揚げる事には成功した。さて、まずはパソコンの電源を入れて、ネットで肺ガンについて調べてみよう。 仮にステージ3とすると『一般的なケースでは、手術後五年の生存率は三十パーセント前後』…簡単に、サラリと書かれているけど、これって十人いたらその内七人は五年目を待たずに死んじまうって事じゃないか。
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