乾杯の後に…

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結婚前に聡のアパートへ通っていたときは「じゃあ、夕食はアタシが作るね」…とか、「朝ご飯は何がいい?」…とか言って、たいがいは彩が素材から持ち込んで料理を作っていた。キッチンから聡の彼女としての足場を固めるのが彩の戦略だったから…。だから聡の料理は食べたことがなかったのだ。彩の頭の中のイメージでは、聡はせいぜい缶詰やレトルトを使って簡単な食事を作るぐらいで、凝った料理を作る姿など想像したこともなかったのだが…。 その日、最後の〆の一品となった和風パスタは、みんなが「おいしい」と絶賛した。タイミングとしてちょうど主菜の丸鶏を食べ終えて、しばらく飲んで小腹がすく時だったこともある。けれど大皿に山盛りに作ったパスタがアッと言う間に消えたということは、人気があった…ということの証明だろう。 何が…と言えるわけではないのだが、彩は気に入らなかった。その日、客達が料理とパーティのオシャレさを絶賛して帰った後、彩はキッチンを片付けながら腹立たしくて仕方なかった。
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