乾杯の後に…

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眼の前のシンクには使った道具が山積み。脇に放り出されたままの卸し金とプラスチックボウルや布巾。たぶん大根をおろしてその汁を切るのに使ったのだろう。ご丁寧にパスタの茹で汁を切るためだけに別の金網のボウルも使ったらしい。大葉と海苔を刻んだまま放置されているまな板と包丁。隠し味に使った…と言っていた出汁醤油のボトルも出しっ放し。買ったばかりだったその出汁醤油は、半分に減っていた。塩に至ってはケースの蓋も閉めないでほったらかし。パスタを茹でてそのままガスコンロの上に放置された寸胴には、パスタの欠片がこびりついていた。 「使ったら、使いっ放し…」 だが腹立たしさの原因はそれだけではなかったろう。彩がホームパーティのために用意するメニューは、アメリカやヨーロッパのスタイルがいろいろ混ざっているにしても、基本的に西欧風で統一されていた。和食やアジア系の料理を入れてしまうと無国籍風になって、写真をブログに載せた時にオシャレじゃなくなるように思えたからだ。彩がやりたかったのはあくまでスタイリッシュなホームパーティで、ファミリータイプの多種多様な料理が並ぶホームパーティではなかったのだ。
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