乾杯の後に…

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けれども聡が作って客に出した一皿は、パスタとは言え、見た目も味付けも和風テイストのもの。たった一品だけだったのだからインスタグラムに載せる写真には入れず、なかったことにすればいい…とは思う。けれど今日の客達もみんなあのパスタの写真は撮っていて、きっと彩のホームパーティに招かれた時の写真として誰かのインスタグラムやブログに載るはずだ。彩がいつものように自分のインスタグラムに「今日のパーティの料理」と題してオードブルからデザートまで写真を載せた時、あのパスタの写真だけが除かれていたら自分の友人達だって不思議に思うだろう。 「そりゃ、聡に任せたのはアタシだよ。アタシが悪いのは解ってるよ」 キッチン・カウンターのシンクに向かい、洗い物をしながらグチのように文句をこぼす彩を、聡はリビングのソファで残ったワインを飲みながら不思議そうに眺めていた。 「でもさぁ~この何もかもが使いっ放しって、どういう事なの? ひとり暮らしで自炊していたことがある人とは思えないわ」 「ああ、大変だったらオレが洗おうか?」 聡が首を傾げながら彩に声をかける。 「そんなことを言ってるんじゃないの!」
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