乾杯の後に…

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聡が借りてきたのは2CVのチャールストンというモデル。案の定、彩もそのクラシカルで個性的なスタイルは気に入った。ワインレッドとブラックの2トーンに塗られたボディカラーもシックで洒落ていたし、淡いグレーの布張りでソファのようなシートも独特な雰囲気を醸し出していて、まるでフランスのファッション誌から抜け出してきたように見える。聡が言う「オシャレな人種じゃないと着こなせないクルマ」の意味がよく解ったような気がした。写真を撮ってインスタグラムに載せ、さらに「我が家の次期マイカー候補」と題してメールに添付して、友人や仲間達に送りまくったのは言うまでもない。そして早速、土曜日の夕方の表参道で大学時代の友人達と待ち合わせすることにした。自分が颯爽と運転する2CVを、みんなに見せたかったから…。 まず駐車場で聡からキーを受け取って、エンジンのかけ方から一通りレクチャーを受けた。彩の免許はマニュアル免許だったが、教習所を卒業してから一度もマニュアル車は運転していなかった。それでも教習所でウンザリする程練習させられたクラッチの操作を思い出して、まず街へ乗り出すことには成功した。
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