乾杯の後に…

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やっと聡が到着して「これはもう、レッカー車を呼ぶしかないな」と言った時、彩は悪いのは解っていたけれど、「じゃぁさ、後は頼むね」と言って逃げるように友人達とその場を立ち去ってしまった。いま想い返しても、とんでもなく身勝手だったと思う。けれどあの時の状況は、彩にとっては限界だった。 きっと聡は怒っているだろう。彩は友人達と食事をした後、家へ帰る電車の中でなんと言って謝ろうかとずっと考えていた。いままで聡に怒鳴られた事など一度もなかったが、今回だけは怒鳴られても仕方ないと思っていた。 けれど恐る恐る家に入ってきた彩に聡が言ったのは、「悪かったね、無理にあのクルマを運転させて」…だった。「でも、事故で彩が怪我した…とかじゃなくてよかった」と言われたときにはもうどうにもならず、彩は泣きじゃくりながら「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ」と言い続けていた。
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