乾杯の後に…

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さすがに聡にしても、彩の運転技術では無理そうなクルマを押し付けたことで気が引けたのだろう。最終的にふたりのクルマは彩の夢だった赤いアウディとなった。もちろんオートマチックの右ハンドル仕様。聡にとっては平凡で退屈極まりないクルマだったが、彩がクルマで出かける度に心配しているよりはマシ…と思えていた。 聡がバーテンの女のコを呼んで三杯目に黒ビールをオーダーし、彩も同じビールをオーダーした。最初はちょっと喉を潤すだけ…ぐらいのつもりだったが、いまは飲みたい気分になっている。彩はそんな自分が不思議だった。だって相手は別れた昔の旦那なのに…。 「そういえば、いまはクルマ、何に乗ってるの? あの時の2CVって、いまもたまに街中で見かけることがあるけど…」 「いや…いまはランドローバーのディスカバリーって、英国製の四駆なんだ。ほら背が高いオフロードタイプのSUVで、ジープみたいなヤツ。ゴルフやキャンプに行くのにその方が便利なんでね…」 「な~んだ、意外とコンサバな選択に落ち着いたのね。あの2CVへの想い入れって、そんなもんだったんだ」
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