乾杯の後に…

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結婚前はデートの度に…というケースもあったのだけれど、結婚して一緒に住むようになると「いつでもできる…」といった意識が生じてくるから、疲れている時やその気になれない時に無理にしようとも思わなくなる。そしてそれ以上に、ふたりであらたまって都合のいい日を調整して、いちいちコンドームを取り出して枕元に置いて…となると、さすがにセレモニーじみて思えて言い出すにも気後れしてしまう。さりとてふたりともすでに、夜中に盛り上がって性的な興奮に任せてSEXになだれ込む…などという恋愛時代の勢いもなくなっていた。もしかしたらふたりは、結婚後に訪れる最初の倦怠期のようなものを迎えていたのかもしれない。ふたりとも次第にSEXの頻度が少なくなって間が開いていっても気にせず、互いにそれが自然の流れのように感じられて、特に不満を持つこともなかった。 結婚して数年目のこの頃は、ふたりの生活を合体させた新婚当初の混乱も調整がついて収まり、生活パターンも安定して落ち着いてくる時期。家庭内で波風が立ったり衝突することも滅多になくなり、聡にとっても、彩にとっても、ようやく安定した日々を過ごせる環境になったと言えるだろう。
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