乾杯の後に…

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ただ聡にしてみれば、新婚旅行は海外へ…という彩の希望に同意はしたものの、外国語はほとんど解らない。頼りは英文科卒の彩の英語力だった。学生の頃は学校のツアーでミシシッピーへ行き、ホームステイしたこともあると言っていたのだから、頼ってもいい…はずだった。 けれども彩にしても、聡と較べれば英語が得意…というだけで、特に会話に関しては片言で話すくらいはできても、何かを説明したり交渉事ができるほどの英語力があるわけでもない。 大体において彩や聡が学生だった頃は、日本の英語教育は英米の古典文学を教えてペーパーテストで点数を付けるためのもので、実用的な会話や海外旅行に役に立つ事を教えるのは学問の役割ではない…とされていた時代だった。帰国子女でもないごく普通の学生だった彩が、英語をペラペラと喋れるはずもなかった。 それにタヒチの公用語はフランス語。観光地なんだから英語が通じるはず…と言われてはいたけれど、地元の人達の誰もが英語を話してくれるわけでもない。
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