乾杯の後に…

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この時期、聡の方は仕事がどんどん忙しくなり、年齢的にも責任の重いポジションになっていくから、必然的に日々のほとんどの時間を会社や仕事先で過ごす事になる。たまに早く仕事が終わると飲みに行くこともあるが、せいぜい会社の同僚と数杯程度。早く終わった…と言っても、いつもは二十四時過ぎなのに二十二時頃に会社を出ることができた程度だから、長居して飲めるほどの時間でもない。彩との間でウィークデイの夕食は互いにバラバラに済ませる…と調整がついて以降は、たいがいはコンビニ弁当を買って会社で夕食も済ませてしまっている。飲んでも生ビール一~二杯とつまみ数皿で、会社の付き合いの域を越えることなどまったくなかった。 一方、彩の方は事務職で、とりたてて変化のある仕事ではない。大手の建設会社で事務職と営業職では採用枠からして違っている。だから人事異動などがあっても部署を移動する事もなく、仕事の中身も相変わらず事務処理をこなしていくだけ。当然、もう何年も同じ毎日の繰り返し。そんなマンネリ化した日常に退屈してくるのは、仕方のない事だったかも知れない。
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