乾杯の後に…

124/205

24人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
まだ彼氏のいない仲間のために、足りないメンバーの穴埋めをしてあげる…。きっと彩も会社の同僚のOL達からの誘いだったら、もう自分は既婚者だから…と当然のように断っていたろう。けれど彩にとって学生時代の仲間は別だった。昔からの友人達が彼氏を見つける手助けをしたあげること。それは彩達にとって友情の証としての献身であり、仲間として付き合っていく上で当然担うべき役割であり、そして絶好の退屈しのぎ…でもあった。あくまでも聡には内緒だが…。 合コン当日、彩は持っているワードローブの中から、シックなカラーでなるべく肌の露出の少ないオーソドクスなワンピースを選んだ。会社を出る時の化粧室でのメイクも遊びに行く時のモードではなく、仕事中のベーシックなメイクにパール系のルージュを引く程度に抑えた。今日の自分はあくまでみんなの引き立て役。控えめに振舞って、相手側の男のコと話す時は必ず仲間の誰かを褒めて、その仲間のコの得意な話題に繋ぐ。そう心に決めて待ち合わせ場所へ向かった。 けれども先に待ち合わせ場所に着いて待っていた美香は、彩を見るなり言った。 「彩、いいじゃん…大人っぽくって。すっごくいい雰囲気だよ」
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加