乾杯の後に…

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彼の名前は木戸紘一。前回の合コンで自己紹介した時も、その名前以外に何を言ったか印象にないほど目立たなくておとなしい男のコだった。美香の同期入社と紹介されたから年齢も彩達と同じ歳のはずだが、こういう場に慣れていない…と言うのは本当なのだろう。本人もチャラいコや、派手に目立とうとするコは苦手らしい。女のコの側にしても、こういうオク手のタイプの男のコは生真面目そうで、どう相手をしていいのか解らないから合コンの席では敬遠される。だからいっそう女性と向き合う機会が遠のいていく。こんな相手は、大人の女性としてリードしてあげるしかないのかも。彩はそう思った。 二次会はカラオケ。誰が提案したのかは知らないが、定番コースだからごく自然に決まった。けれど食事の清算を終えてレストランを出たら、みんなで決めたカラオケ店へ移動している時にメールが届き、真理とその相手、そしてもう一組のカップルが早速消えた。 さらにもう一組のカップルもカラオケ店に着いて数曲歌うと、彼女が彩と美香に耳打ちして消えた。 「明日、用があって早いんだ。彼が送ってくれるって言うから、悪いけど先に帰るね」
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