乾杯の後に…

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相手とふたりになりたくて抜ける時の、定番のセリフ。そして美香も相手とかなり盛り上がっている。ふたりで抜けると言い出すのは時間の問題のような気がした。 案の定、美香の相手がマイクを握っている時、美香が目配せして来たので一緒に化粧室へ行くと、ドアを閉めるなり両手を合わせて言った。 「ゴメン…彼がふたりで飲み直さなないか…って。でも抜けたらマズイよね」 どうやら彩を気遣えるような状況ではなくなったようだった。それはそれで目出度いこと。こんな時は喜んで送り出してあげるのが親友の務め。 「大丈夫だよ…こっちは。結婚してる分、男は扱い慣れてるからね。それにあの人、真面目の上に『ド』がつくほど真面目な人みたいだから…。アタシはうまくあしらって帰るから、美香は気にしないで行きなよ…」 美香と彼をふたりにしてあげるため、時間差を作ってカラオケルームを出ることにした。美香は、彩を拝んで申し訳なさそう…だったわりに、嬉々として彼の後ろについて去っていった。 だが、意外だったのはそんな彼らの背中を見送る紘一の反応だった。 「アハ…みんな行っちゃったね」
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