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その彩のひと言で、彩が望んで自分と残ったのではないことを理解したのだろう。
「ごめんなさい…ボクなんかと残っちゃって…」
溜息をついて、所在なくカラオケの選曲端末をいじる彼を見て、彩はちょっと彼が可哀想に想えてきた。こうしてカラオケルームにふたりだけになっても、迫ってくる気配もない。それどころか、真面目なだけにシラケてキマリが悪い時の誤魔化し方も知らないのだろう。
もちろん彩が既婚であることは絶対に言えない。けれどもこのままうまくはぐらかして逃げてしまうのも気が引ける。他のコを選んでいれば、そしてうまくカップルとして成立していれば、この先へ行けたはずなのに…。
仕方ないよね。なぐさめる…って訳じゃないけど、このままもう少しだけ遊んであげようか…。
何かオシャレな話題を…。彩は先日、大学時代の友人からハワイの土産にもらったバニラフレーバーのリップグロスがバッグの中に入っているのを想い出して、取り出した。
「知ってる? おいしいんだよ…コレ、アイスクリームと同じ香りなの」
もしかしたら無事に仲間のための合コンを終えて、うまく役目を果たした解放感もあったのかも知れない。
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