乾杯の後に…

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彼の眼の前で、塗って見せる。舌先でちょこっと舐めて、これでハワイのココナッツアイスクリームの話に振って…。 ふいに視界が影に覆われ、彼の唇が迫ってくる。あまりに単純で、想定外にストレートな反応。そしてぎこちない、あまりにぎこちない口づけ。彼の唇は震えていた。これをキスなんて呼べない…彼の唇が離れた後、彩はそう思ってクスリと笑ってしまった。それを彼は、彩が喜んでいる…と解釈したのだろう。次はもっと強く、強引に唇と押し付けてきた。そしてもう一度…。今度は顔を背けて逃れ、ちょっとジラしてみる。行き場を失った彼は彩の頬に唇を押し付けただけで、仕方なく顔を引いた。ちょっと迷っている?…そんなウブなところも彩の母性本能をくすぐる。ようやく彼が決心したように彩の肩に腕を廻し、抱き寄せようとした時、素直に頭を彼の肩に預けてあげる。 「大丈夫?」 「ウウン…ちょっと驚いただけ」 大ウソだった。 「まさか、キスされるなんて…」
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