乾杯の後に…

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幾度かメールをやり取りして、ふたりで食事をしに行った。今度は彼が選んだ居酒屋だったけれど、その分気軽になれたようで話が弾んだ。 同じ歳で、都内の有名私立校出身。小学校から付属校で育った…という環境も彩と同じ。聡のように高校、大学と受験を繰り返してきたタイプと違って、共感できる面が多かった。 そしてさすがに外資系金融会社の中でもエリート予備軍と美香が太鼓判を押したくらいで、女性に関しては不器用でド初心者であっても、仕事の話となると彩にスゴイと思わせるネタには事欠かなかった。 なによりも、たまたま隣のテーブルに座った外人グループを相手に、スラスラと英語でメニューの説明をしてあげたのには驚かされた。運命の女神が彼に微笑んだ…としか言いようがないだろう。なにしろ英文科出身なのにロクに英語を話せない美香にとっては、それ以上ポイントの高い演出はなかったろうから…。そこから学生時代に留学して海外で数年間過ごした話になると、「可哀想だから相手をしてあげる」と言った当初の理由付けはどこかへ飛んでいってしまい、「こんな彼氏が欲しかった」と素直に想えていたから女心は解らないものである。
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