乾杯の後に…

146/205

24人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
だから三か月ほど経ったある日、彼が珍しくレストランや居酒屋ではなくカフェで逢いたいと言ってきた時、すでに彩は予感していた。そして彼がこの先に進みたい…と言いだしたら、何と答えようか迷っていた。もうこれ以上は無理なのよ…? あるいはアタシは既婚者なの…騙していてゴメン? こんなケースで、定番のセリフなんてあるんだろうか…。 けれどもその店に彩が着くと、先に来て待っていた彼は思い切ったように切り出した。 「彩さんって、結婚してるんですよね。真理さんから聞きました。なんかそんな気がしてたから、べつに驚かなかったけど」 怒っているわけでもなく、悲しんでいるわけでもなく、淡々とした口調だった。まるで諦める決心が付いたかのように…。 「ウン…ゴメンね。美香たちの合コンで出逢っちゃったから、なかなか言い出せなくって…」 「もし…ですよ、もし…ご主人と別れて、ボクと一緒になる…なんて未来もあり得るんなら、このまま付き合っていきたいと思ってるんですけど、ダメかなぁ…」 「ねぇ、解って…。あなたは本当に大切な友達なの。だからしてあげられる事は、何でもしてあげたい。でもこれ以上は無理…。無理なのよ…」
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加