乾杯の後に…

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彩はちょっと迷ったが、それ以上その話題を続けるのはやめておいた。 「でも、よかったじゃない。仕事は順調そうで…」 「ウン…しがない中間管理職だけどやっと自分のチームを持って、いまは自分の企画を自分でカタチにできるからね」 「そんなに忙しくても、まだ仕事には前向きなんだ…」 「何日徹夜したって、膨大な作業にウンザリしたって、稔ったな…って想える瞬間があればやっていけるものさ…」 「稔り…かぁ。充実してるんだね」 「七転八倒してもさ、カタチにできた…って実感があれば、次を目指して進んでいく気になれるもんだしね」 「そんなもんかもね。…じゃあさ、アタシ達の結婚には、稔った瞬間ってなかったの?」 「ウ~ン、オレ達の場合は、結婚自体がひとつの稔り…だったんじゃないのかな」 「その先が、続かなかった…って事?」 「結婚ってさ、人生のひとつのゴールだから、そこに到達すること自体が目標みたいなもんだろ? それを達成したんだから、充実してるんだとばかり思ってたけどな。彩はそう思ってなかった?」
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