乾杯の後に…

「えっ、なんだ…ゴルフ番組なんか観るんだったの？　あなたはゴルフなんて興味ないはずでしょ？　何かの間違いだろうと思って、キャンセルして別の番組を予約したんだけど…。ほら、いつものドラマ、水曜九時はよく見逃すから録画予約しておくことにしたの。でも音楽番組の予約も重なっていて、そのＤＶＤプレーヤーって二番組しか重複して予約できないから、どれかひとつを外すしかなかったのよ」
彩はまったく悪びれずに、自分の予約を優先させた理由を述べた。彩にしてみれば聡がゴルフ番組を観るなど、本当に信じられなかったのだろう。

たしかに、それまで聡はゴルフなどまったく興味がなかった。けれども管理職になると事情も違ってくる。その前の月から聡の名刺には副編集長の肩書きが加えられていた。
そうなると印刷会社のゴルフ接待や、業界関係者のゴルフコンペの誘いなども断りにくくなる。執筆を依頼している作家先生達にもゴルフ好きは多く、そろそろグリーン・デビューの時期と言えた。