乾杯の後に…

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いま思い返してみると、どうしてそんなに長い時間を退屈もせずに一緒に過ごせたのか、自分達自身もよく解らないのだが…。 恋人同士だと、何時間でも他愛もないお喋りを続けることができるのに、夫婦になると、たった十分も相手の話を聞いているだけで飽きてしまう。それは単純に言えば、相手に対して関心を失った…ということ。けれどもっと根本的な問題は、相手に対して関心を持っていることを示す必要がなくなった…ということなのかも知れない。 イベントも、お喋りも、一緒に暮らすようになると今更どれも必要な事ではなく、それより自分の時間がないことの方が悩みとなる。聡と彩の場合も「ひとりになる時間」、いや…もっと有り体に言えば「相手と一緒ではできないことをする自由時間」が必要だった。 かくして、それぞれが自分の休日の過ごし方を見つけるようになると、互いの無関心は加速していく事になる。 聡にとってゴルフは会社の付き合いで始めざるを得なくなったことであって、別にゴルフ自体が好きだった訳ではない。むしろ学生の頃はテニスが趣味で、ゴルフをやっている自分なんて想像したこともなかった。
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