乾杯の後に…

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そうしてぶつかり合う面倒を避け、相手に干渉しないようになっていくこと。それは、当初はふたりにとってうまくやって行く知恵のはずだった。けれどもそれが相手に対して無関心になっていく第一歩でもあったのは、皮肉と言う他ないだろう。 それから二年後、離婚話が本格化した時、彩は幾度か考えたことがある。なぜあの時にちゃんと向き合って、話し合っておかなかったのか…と。互いに納得できるまで話し合って、互いに改めることは改めていたら、結果は違っていたかも知れない。けれど一方では、それはむしろ離婚を早めただけかも知れない…そうも思えた。なぜならふたりがちゃんと話し合うことがあったとしても、それはぶつかり合ってでも自分を押し通すためであって、けして互いに譲り合うためではなかっただろうから…。 「そういえばさ、ゴルフってまだやってるの?」 「あれってさ、サラリーマンの必修科目みたいなもんでね。あげくに何歳になってもできちゃうから、辞めようがないんだ。別にやりたくてやってる訳じゃないんだけどね…」 「その割には入れ込んでたよね…あの頃は」
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