乾杯の後に…

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結婚して半年ほど経った頃、聡の勤務先の出版社では新雑誌を創刊するプロジェクトが立ち上げられ、聡もそのメンバーに入れられていた。担当は国内や海外の最新ヒット商品のページ。その中のひとつの商品を取り上げ、メーカーを取材して開発から市場開拓までのストーリィを紹介する企画ページも担当することになっていた。 大学卒業以来、ずっと編集職を歩んできてやっと掴んだ自分のページ。しかし担当ページを持つということはその企画の責任者となることであり、雑誌の発行部数を伸長させる責任の一端を背負わされたことも意味している。 新しい部署の職責と新婚家庭。そんな慣れない新生活は聡にとって多重のプレッシャーともなっていたようで、結婚から一ヶ月ほど経った頃、胃をやられた。病院での診断はストレス性胃炎。聡はあえてそれを彩には内緒にして、クスリで治した。彩に言ったら、彩は自分のせいだ…と思ってしまうだろうから。 その頃から、仕事は容赦なく聡にのしかかってきた。
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