乾杯の後に…

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当時の聡の上司だった編集長の口癖は「他にアイディアはないのか…」。おまけに企画ページの編集会議には、編集部のスタッフだけでなく営業部長や雑誌部の本部長、時には出版部門の役員までが顔を出し、「どっかで見たような企画だなぁ」、「もっと面白い切り口はないのか」、「なんか新鮮味に欠けるんだよ」…などと勝手な感想を言う。そしてそのたびに聡たち担当チームのスタッフは新しいアイディアを練り直し、企画案を作り直すことになる。 その月の企画案が編集会議で承認されるまでを、聡たち編集部の人間は「地獄のロード」と呼んでいた。初期の段階では二十一時、二十二時の電車で帰れるが、一旦編集会議で進行中の企画案が却下されると、後は時間無制限のデスマッチとなるからだ。そして企画案がスンナリと通らない…ということは、その後の工程もすべてが遅れることを意味する。いわゆる「押せ押せのスケジュール」である。
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