乾杯の後に…

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終電車で帰ることができればラッキーな方。締め切りが迫って切羽詰まってくれば、毎日深夜のタクシー帰宅や徹夜が当たり前となり、土日も休日も関係なく働き続けることになる。その代わり出社時間は融通が利き、十一時頃に出社していれば文句を言われることはなかったが…。 一方、彩は大手建設会社の社員で担当は経理事務。聡とはまるで違う世界だ。各営業部から上がってくる売上や経費などのデータを、PC端末から財務部のサーバにデータ入力していく毎日で、聡のようにアイディアを要求されることもなかった。だから聡の仕事を理解しようにも想像する術すらなかった。 残業も月に数日程度。月末や期末に各営業部や業務部の数字が集計されてくるのが遅れていると、二十一時頃まで会社にいることもあったが、基本的には十七時退社で一定しているのが当たり前。その代り朝は九時出社。勤務はタイムカードで管理され、上司が遅刻にうるさかったから、月曜から金曜まで決まって七時半にはマンションを出ていた。 つまり聡が仕事の重責を担うようになればなるほど、ふたりの生活は文字通りスレ違いの日々となっていく。
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