乾杯の後に…

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この時、聡は副編集長になっていた。この副編集長というポジション、単なる編集担当だった時代から見れば出世のステップを昇ったわけだが、それは自分の企画ページを担当するだけでなく、特集ページのチームを率いたり、部下の担当ページの面倒も見なければならないことを意味している。仕事はやっても、やっても、際限がなかった。 担当しているのは月刊誌だが、ひとつ締め切りを乗り切るとすぐに次の月の編集作業に取りかからなければならない。その合間を縫って二か月先、三か月先の号の企画を考え、案を練って編集会議を通し、下調べや取材など記事の仕込みをする。 自分がサボったり手を抜けば、自分の編集チーム全体に迷惑がかかる。いい加減にやってトラブルが生じればすぐスケジュールに影響し、印刷会社や配本会社にシワ寄せが行ってしまう。 職責…などと言う大層なことを思って仕事をしていたわけではない。けれどこの年齢までひとつの職種でキャリアを重ねてくれば、自分が担うべき役割ぐらいは自覚する。自分の仕事の責任を全うしようと思えば、時間はいくらあっても足りなかった。
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