乾杯の後に…

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そうして日々を過ごしていく内に、気がつけば聡の日常は妻の彩と過ごす時間よりも、部下の女性担当者と一緒にいる時間の方が遙かに長くなっていた。仕事の大変さも、難しさも、悩みも、理不尽な上司や広告主への憤りも、経営幹部への不満や怒りも、解ってくれるのはその女性であって、彩ではなかった。 彼女は聡が責任担当となっている編集ページの海外ニュースの担当者で、名前は内田恵子。コラムのネタとなる海外通信社の配信を翻訳してくれ、ニュース・ソースとしての利用を交渉してくれるバイリンガルの帰国子女である。最初は何でもストレートに言うので生意気に思えたが、仕事はできた。だから一緒に仕事をしていくと、じきに彼女がいなければ仕事が回らない…ぐらいの存在になってくる。そうして彼女を頼りにするようになると、彼女の日本人らしくない思考回路も理解できるようになり、自然と打ち解けて何でも話せるようになっていった。
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